第9話 =普通のおじさん=

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ロンドンで知人の紹介で知り合った「タクさん」という日本人のミュージシャンがいた。過去形なのは今は何処へ行ってしまったのかわからないからだ。風の便りではスペインでバンドをやってるらしい。

ある日、彼のバンドのライブに誘われた。場所はカムデンタウンにある有名ライブハウス。

彼は関西人らしく、口八丁手八丁で有名レコード会社のプロデューサーやらプロのミュージシャンやらに声をかけ、その日のライブを大々的をプロモーションしていた。そのせいか当日は超満員、アンコールもありの大盛況だった。

人でごった返していたということもあり、ライブが終わってからタクさんと歓談するチャンスがなく、ひとり階下のパブでチビチビと飲んでいた。退屈そうにしていたからか、隣から知らないおじさんが声をかけてきた。こっちのパブにいるとよくある事なので何の気なしに話していると、おじさんはタクさんの友人で僕と同じくライブを見に来たのだと言う。お互い一通りバンドの感想などを言い合い、和気あいあいと談笑していた。

そのおじさん、どう見てもよくパブでたむろしている普通のおじさんで、とても音楽関係者とは思えない。そのわりには音楽の専門用語などもポンポン出てくるし、「昔バンドでもやってたのかな」くらいに思っていた。

30分ほどして、タクさんが階上のライブハウスから降りてきた。

タクさんとおじさんは挨拶を交わし、何やら英語で会話している。今日のライブの感想などを話しているようだ。話がひと段落すると、タクさんは僕に言った。「土門君、この人誰だか知ってるよね?」

僕は正直に答えた。「えっ、知らないけど。誰?」

「昔、有名なバンドにいたんだよ。なんていうバンドか聞いてみな!」とタクさんはニヤリとした。僕がたどたどしい英語で尋ねると、おじさんはちょっと照れたようにこう言った。

「いやー、つまらんバンドなんだけどね。『セックスピストルズ』っていうんだ…」

僕は固まった。



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