第17話 =便利屋稼業 その3=

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好評の便利屋ネタ、第3弾を紹介してみよう。

これは僕が新宿の営業所にいた時の話である。ある若い女性からマンションの部屋掃除の依頼が来た。確か住所は新宿区大久保一丁目、近所なので歩いていった。

大久保という街はただでさえ渾沌としているのだが、細い路地を抜けてたどり着いたマンションは見るからに危なそうというか、妙な雰囲気だった。ドアを開けてくれたのは一見20代の普通のOL、彼女も知り合いに頼まれて来たとのことで、この部屋の住人の事は知らないらしい。

玄関から部屋の中を眺めてゾッとした。ものすごい汚れようなのである。便利屋に掃除を頼むくらいだから、ある程度は覚悟していたが、これ程だとは思わなかった。彼女の話によると、病気の老人が数十年住んでいて、ほとんど家から出ず、ゴミなどをまったく捨てに行かなかったらしい。よく言われるゴミ屋敷だ。そして最近、音沙汰が無いのでマンションの管理人が部屋を開けたら老人は死んでいたそうだ。死後数カ月経ってたと思われる状況だったとの事。

中の荷物を片付けててわかった事だが、この死んだ老人は医者兼タレントで、僕も昔テレビで見た事がある。名前は忘れた。ちなみにケーシー高峰ではない、最近テレビに出ないと思っていたら、こんな事になっていたとは…。

医者だったということもあり、ゴミの中に大量の薬、注射器、点滴の器具などが混じっていた。もしかしたら自分で延命治療をしていたのかもしれない。すでに2トントラック2杯分のゴミを搬出していて、今回は最終の後片付らしいが、それでも足の踏み場もないくらいの散らかりようだ。汚物の跡も大量にある。

結局三日間掛かってお化け屋敷みたいな部屋は何とか片付いた。あまりにも酷い環境下での作業だったので彼女も不平タラタラ作業していた。「ほんと、いいかげんにしてほしいよねっ!」と怒りをあらわにしていた。

最後に僕は押し入れの引き出しを開けて、金目の物でなければゴミ袋にどんどん捨てる作業をしていた。彼女は溜まったゴミ袋を外に出しに行っていた。

押し入れの一番奥に古い額縁があった。それを手に持って何気なしに見ていてハッとした。なんとそこには七五三の衣装を纏った、さっきまで一緒に掃除をしていた彼女の幼い頃の写真が入っていたのだ。僕の頭の中で彼女と死んだ住人が結びついた。

彼等は親子だったのだ。

僕はその写真をそのまま捨てていいものか迷ったので、ゴミ捨て場から帰ってきた彼女に、「こんなものが出てきたんだけど…」と言って手渡した。

はじめは怪訝そうにしていた彼女だったが、突然涙が溢れ出した。

彼女の話によると、十代の頃あまりに厳格だった父親に反発し、ある日突然家出をしたとの事。そしてそのまま今まで何の連絡もせず音信不通にしていたらしい。死んだことによって現在唯一の身内である彼女のところに行政から連絡が入ったのだそうだ。そしてあまりにも悲惨な状況だったので、他人の振りをして掃除を便利屋に依頼したらしい。

床に座り込んだ彼女がボーッと見つめているその額縁写真の中には、無邪気に戯けている幼い彼女の横で、優しく微笑んでいる父親の幸せそうな姿があった。

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